大判例

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神戸地方裁判所 昭和28年(行モ)10号 決定

被申立人が昭和二八年一〇月八日浅選管告示第五五号を以てなした浅野村村長解職賛否投票に関する告示の効力は、当庁昭和二八年(行)第二二号村長解職請求者署名無効確認請求事件の判決が確定するに至るまでこれを停止する。

二、理  由

申立代理人は主文同旨の決定を求める旨申立てた。その申請の理由とするところは、

「申立人は兵庫県津名郡浅野村村長であるところ、同村住民中筋清三外一三名は申立人に対する解職請求の代表者となり、同村有権者総数一、四七二名の内、法定数四九一名を超える六二三名の解職請求者の署名を蒐集した上、その署名簿を昭和二八年七月二五日被申立人に提出した。被申立人は審査の結果内六〇八名の署名を有効と決定した上、昭和二八年八月一一日より縦覧に供したので、申立人は同月一六日被申立人に対し異議の申立をしたところ、被申立人は同月二六日その申立はすべて正当でないと決定した。そこで申立人は同年九月五日神戸地方裁判所に右決定には左記の違法があるとしてその取消訴訟を提起し、目下同庁昭和二八年(行)第二二号村長解職請求者署名無効確認請求事件として繋属中である。即ち、

(1)  請求代表者の中に公務員であるため法令上請求代表者となることができない者が加つている。すなわち、井戸勝一は浅野村議会議員、織田一雄は浅野村農業委員であるから請求代表者となることはできない。

(2)  請求代表者以外の者で署名を蒐集することができる者は、請求代表者より署名蒐集の委任をうけた上当該普通地方公共団体の長及び受任者の属する市町村の選挙管理委員会にその氏名及び委任年月日を届け出た者に限られるところ、本件においては、村長である申立人に何らの届出もなく請求代表者以外の者が署名を蒐集している。

(3)  有効と決定された署名の中に二八二名の自署でない書名がある。

との理由である。

然るに、被申立人は昭和二八年一〇月八日浅選管告示第五五号を以て同月二八日に浅野村村長解職賛否投票を執行する旨告示しているのであつて、右投票の結果若し申立人がその職を失うことになると他日申立人が右取消訴訟で勝訴したとしても償うことができない損害を蒙ることになり、又不当な右投票の強行は徒らに村政を混乱させるだけでなく、村民に対しても償うことができない多大の精神的物質的損害を与えることは明かである。よつて、それらの損害を避けるため、前記取消訴訟の判決が確定するまで右告示の効力を停止することを求めるわけである。」と謂うのである。

そこで考えてみると、申立人の主張事実の中、その主張のような取消訴訟が当庁昭和二八年(行)第二二号村長解職請求者署名無効確認請求事件として繋属していることは当裁判所に明らかなところであり、又、申立人が異議申立の事由とした事実を除くその余の事実はすべて申立人の提出した疎明資料によつて認めることができる。

そして申立人提出の疎明資料によると、本件解職請求代表者の一員である井戸勝一が浅野村村会議員、同じく織田一雄が同村農業委員にそれぞれ在職していることが窺われるところ、地方自治法第八五条第一項は普通地方公共団体の長の解職の投票には原則として公職選挙法中普通地方公共団体の選挙に関する規定を準用する旨定め、同条項を承けた同法施行令第一一六条の二によつて準用される同令第一〇八条第二項によると、右普通地方公共団体の選挙に関する規定を準用する場合においては公職の候補者に関する規定はすべて解職請求代表者に関する規定とみなされ、更に同令第一一八条によれば、解職請求代表者に関する規定とみなされる、右公職の候補者に関する規定の内、公職選挙法第八九条第一項本文を準用する場合においては、同条項の「公職の候補者」とあるのは「普通地方公共団体の長の解職請求代表者」と読み替えるものとしている結果、国又は地方公共団体の公務員は在職中普通地方公共団体の長の解職請求代表者となることができないわけである。

そして村会議員及び村農業委員がともに就任について、公選によることを必要とする職であつて、地方公務員法第三条第三項第一号に所謂特別職に属する地方公務員であるところ、いずれも右規定によつてその在職者は解職請求代表者になることができないから、前記井戸及び織田両名は本件において請求代表者になることは許されなかつたものと謂わなければならない。

更に、請求代表者が多数人ある場合においては、その行為は全員の意思の合致に基く合同行為でなければならないところ、本件解職請求において右井戸及び織田の両名は請求代表者としてなすべき一切の手続に関与しているわけであるから、その余の点について考えてみるまでもなく、本件解職請求手続の違法はかなり大きいものであることが認められる。

そうすると、右の違法を指摘する前記取消訴訟における申立人の主張は一応首肯せしめるに足るものを含んでいるのであつて、このような事情の下で被申立人の前記告示に基き村長解職賛否投票を執行することは、申立人の述べるようにその結果の如何によつては申立人に対し償うことができない損害を生ずることは明かである。よつてその損害の発生を避けるため、前記取消訴訟の判決が確定するに至るまで被申立人のなした前記浅選管告示第五五号の効力を停止する緊急の必要があることを認め、行政事件訴訟特例法第一〇条第二項に則り主文のとおり決定する。

(裁判官 古川静夫 中島孝信 坂上弘)

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